暑い夏には、つい冷たい飲み物やアイスクリーム、そうめんといった冷たい食べ物に手が伸びがちです。一時的に体を冷やしてくれるこれらの飲食物は魅力的ですが、摂りすぎると胃腸に負担をかけ、様々な不調を引き起こす原因となることがあります。これは、いわゆる「夏バテ」の症状の一つとしてもよく見られます。なぜ冷たいものの摂りすぎが胃腸の不調に繋がるのでしょうか。まず、冷たいものが大量に胃腸に入ってくると、胃腸の血管が収縮し、血行が悪くなります。血行が悪くなると、胃腸の蠕動運動（ぜんどううんどう：食べ物を消化・吸収しながら先へ送る動き）が鈍くなったり、消化酵素の分泌が低下したりして、消化機能全体が低下してしまいます。その結果、食べ物がスムーズに消化されず、胃もたれや食欲不振、消化不良、腹痛、下痢といった症状が現れやすくなるのです。また、冷たいものばかりを摂っていると、体が内側から冷えてしまい、全身の血行不良や自律神経の乱れを招くこともあります。自律神経は胃腸の働きをコントロールしているため、そのバランスが崩れると、胃腸の機能異常がさらに悪化する可能性があります。さらに、夏場は暑さで体力を消耗しやすく、免疫力も低下しがちです。胃腸が弱っているところに、冷たいもので追い打ちをかけると、普段なら問題にならないような少量の細菌やウイルスにも感染しやすくなり、感染性胃腸炎を引き起こすリスクも高まります。夏の胃腸の不調を防ぐためには、冷たいものの摂りすぎに注意することが大切です。飲み物はできるだけ常温に近いものを選んだり、一度に大量に飲むのではなく、少量ずつこまめに摂取したりするようにしましょう。食事も、冷たい麺類ばかりに偏らず、温かいスープや味噌汁、消化の良い煮物などを取り入れ、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。体を温める作用のある生姜やネギといった香味野菜を上手に活用するのも良いでしょう。