骨粗鬆症の最も恐ろしい点は、骨がもろくなることによって、骨折のリスクが著しく高まることです。そして、この骨折が、特に高齢者の場合、寝たきりや要介護状態へとつながる大きな原因の一つとなっています。骨粗鬆症による骨折を防ぎ、健康寿命を延ばすためには、早期発見・早期治療と、日常生活での転倒予防が非常に重要です。骨粗鬆症で骨折しやすい部位としては、背骨(脊椎椎体骨折)、手首(橈骨遠位端骨折)、太ももの付け根(大腿骨近位部骨折)、腕の付け根(上腕骨近位部骨折)などが挙げられます。中でも、大腿骨近位部骨折は、手術が必要になることが多く、その後のリハビリテーションも長期間にわたるため、患者さんのQOL(生活の質)を大きく低下させ、寝たきりの原因となりやすい代表的な骨折です。また、脊椎椎体骨折は、強い痛みを伴わない「いつの間にか骨折」であることも多く、気づかないうちに複数の骨折が進行し、背中が丸くなったり、身長が縮んだり、慢性的な腰痛の原因となったりします。これらの骨折は、日常生活動作を困難にし、活動範囲を狭め、さらなる筋力低下や骨密度の低下を招くという悪循環を生み出す可能性があります。このような事態を防ぐためには、まず骨粗鬆症の早期発見と適切な治療が不可欠です。定期的な骨密度検査を受け、もし骨粗鬆症と診断された場合は、医師の指示に従って薬物療法や生活習慣の改善に取り組みましょう。そして、骨折の最大の原因である転倒を予防することも非常に重要です。家の中の段差をなくしたり、手すりを設置したり、滑りにくい床材を選んだりといった住環境の整備。筋力やバランス感覚を維持するための適度な運動。滑りにくい靴を選び、杖や歩行器を適切に使用すること。そして、めまいやふらつきを引き起こす可能性のある薬を服用している場合は、医師に相談することも大切です。骨粗鬆症と骨折のリスクを正しく理解し、予防と治療に積極的に取り組むことが、寝たきりを防ぎ、自立した生活を長く続けるための鍵となります。
骨粗鬆症と骨折寝たきりを防ぐために