ロタウイルス感染症の主な感染経路は、人から人への糞口感染ですが、「食べ物から感染することもあるのだろうか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。結論から言うと、ロタウイルスが食べ物を介して感染する可能性はゼロではありませんが、主要な感染経路とは言えません。ロタウイルスは、感染者の便や嘔吐物の中に大量に含まれています。もし、感染者が調理中に手洗いが不十分であったり、咳やくしゃみで飛沫が食品に付着したりした場合、その食品がウイルスに汚染される可能性があります。そして、その汚染された食品を他の人が加熱せずに食べたり、加熱が不十分だったりした場合に、経口感染するリスクが生じます。また、カキなどの二枚貝が、ウイルスに汚染された下水の影響を受けた海水中で生育した場合、貝の内部にウイルスが蓄積されることがあります。これを生や加熱不十分な状態で食べると、ロタウイルスだけでなく、ノロウイルスなどの他の食中毒原因ウイルスにも感染する可能性があります。ただし、ロタウイルスは熱に比較的弱いとされており、中心部まで十分に加熱(例えば、85~90℃で90秒以上)することで、その感染力を失わせることができます。そのため、加熱調理された食品からの感染リスクは低いと考えられます。食品からの感染よりもはるかに多いのは、やはり感染者の便や嘔吐物、あるいはそれらが付着した手指や物を介した人から人への感染です。したがって、ロタウイルス感染症の予防においては、食品の取り扱いに注意することはもちろん重要ですが、それ以上に、徹底した手洗いや、トイレの後やおむつ交換後の適切な処理と消毒、そして感染者との密接な接触を避けるといった対策が、より重要になると言えます。