浮腫(むくみ)が悪化し、慢性化する中で特に注意が必要なのが「リンパ浮腫」です。リンパ浮腫は、リンパ液の流れが滞ることによって、腕や足などの皮下組織にリンパ液が過剰に溜まってしまう状態で、進行すると治療が難しくなり、生活の質(QOL)を著しく低下させる可能性があります。リンパ系は、血液循環とは別に、体内の老廃物や余分な水分、タンパク質などを回収し、免疫機能にも関わる重要なシステムです。リンパ液は、リンパ管を通ってリンパ節でろ過されながら、最終的に静脈に合流します。しかし、何らかの原因でリンパ管が損傷したり、リンパ節が機能しなくなったりすると、リンパ液の流れが妨げられ、リンパ浮腫が発症します。リンパ浮腫の原因は、大きく分けて二つあります。一つは、がんの手術(特にリンパ節郭清)や放射線治療、外傷、感染症などが原因で、後天的にリンパ管やリンパ節が損傷されることによって起こる「続発性(二次性)リンパ浮腫」です。乳がんや子宮がん、卵巣がんなどの手術後によく見られます。もう一つは、生まれつきリンパ管の発達が不完全であったり、機能が弱かったりするために起こる「原発性(一次性)リンパ浮腫」です。初期のリンパ浮腫は、指で押すと跡が残る程度の軽いむくみで、夕方になると悪化し、朝になると軽減することが多いです。しかし、この段階で適切な治療やケアを行わずに放置しておくと、徐々に症状が進行します。むくみが硬くなり、指で押しても跡が残りにくくなったり、皮膚が厚く硬くなったり(線維化)、象の皮膚のようにゴワゴワとした状態(象皮病)になったりすることがあります。また、リンパ浮腫の患部は免疫力が低下するため、細菌感染(蜂窩織炎など)を起こしやすく、感染を繰り返すことでさらにリンパ浮腫が悪化するという悪循環に陥ることもあります。リンパ浮腫は、完治が難しい病気ですが、早期に発見し、圧迫療法(弾性包帯や弾性ストッキングの使用)、リンパドレナージ(専門的なマッサージ)、スキンケア、運動療法などを組み合わせた複合的治療を継続することで、症状の進行を抑え、QOLを維持することが可能です。
リンパ浮腫とは?浮腫の悪化が招く難治性の病