熱はないものの、痰が絡む咳が長引いている場合、呼吸器内科と耳鼻咽喉科、どちらを受診すれば良いのか迷うことがあるかもしれません。それぞれの診療科の役割と、症状に応じた受診先の選び方について解説します。まず、呼吸器内科は、肺や気管、気管支といった下気道(空気の通り道のうち、喉よりも下)の病気を専門とする診療科です。痰がらみの咳の原因として、気管支炎(慢性気管支炎を含む)、気管支拡張症、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺結核、肺がん、間質性肺炎などが考えられる場合、呼吸器内科が適切な相談先となります。特に、息切れや呼吸困難、胸痛、血痰(血液の混じった痰)といった症状を伴う場合や、喫煙歴が長い方、あるいは以前に肺の病気を指摘されたことがある方は、呼吸器内科での精密な検査(胸部レントゲン、CT、呼吸機能検査、喀痰検査など)が推奨されます。一方、耳鼻咽喉科は、鼻、副鼻腔、咽頭(のど)、喉頭(のど仏のあたり)といった上気道(空気の通り道のうち、鼻からのどまで)の病気を専門とします。痰がらみの咳の原因が、鼻や喉のトラブルにあると考えられる場合に受診します。例えば、副鼻腔炎(蓄膿症)では、膿性の鼻水が喉に落ちる「後鼻漏(こうびろう)」が起こり、これが刺激となって痰がらみの咳が出ることがあります。アレルギー性鼻炎や咽喉頭アレルギーでも、鼻水や喉の粘膜の過敏性が咳を引き起こすことがあります。また、逆流性食道炎によって胃酸が喉まで逆流し、それが刺激となって咳や痰が出ることもあり、耳鼻咽喉科で相談できる場合があります(消化器内科が専門となることもあります)。どちらの科を受診するか迷う場合は、まず、咳や痰以外の症状に注目してみましょう。鼻水や鼻づまり、喉の痛みや違和感が強い場合は耳鼻咽喉科、息切れや胸の症状が気になる場合は呼吸器内科、という大まかな目安があります。また、両方の科が連携して治療にあたることもあります。かかりつけ医に相談して紹介してもらうのも良いでしょう。