関節リウマチの治療は、近年、生物学的製剤やJAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬といった新しいタイプの薬剤の登場により、飛躍的な進歩を遂げています。これらの薬剤は、従来の抗リウマチ薬(DMARDs)では効果が不十分だった患者さんや、より強力な治療が必要な患者さんにとって、新たな希望となっています。まず、生物学的製剤は、バイオテクノロジーを用いて作られた薬剤で、関節リウマチの炎症や関節破壊に深く関与している特定のサイトカイン(炎症を引き起こす物質、例えばTNF-αやIL-6など)や、免疫細胞の働きをピンポイントで抑制する作用を持っています。これにより、従来のDMARDsよりも強力かつ迅速に関節の炎症を抑え、関節破壊の進行を遅らせる効果が期待できます。生物学的製剤には、点滴で投与するものと、皮下注射で投与するものがあり、薬剤の種類によって投与間隔も異なります。主な副作用としては、感染症(肺炎や結核など)のリスクが高まることや、注射部位反応(赤みや腫れ、痛みなど)などが報告されています。次に、JAK阻害薬は、比較的新しい経口薬(飲み薬)で、細胞内の炎症シグナル伝達に関わるJAKという酵素の働きを阻害することで、複数のサイトカインの作用を同時に抑制し、関節の炎症を抑えます。生物学的製剤と同様に高い有効性が期待でき、経口薬であるため投与の利便性が高いという特徴があります。主な副作用としては、感染症(帯状疱疹など)、肝機能障害、脂質異常症、血栓症などが報告されています。これらの生物学的製剤やJAK阻害薬は、メトトレキサート(MTX)などの従来のDMARDsで治療効果が不十分な場合や、副作用で使用できない場合に、医師の判断によって選択されます。高価な薬剤であるため、医療費助成制度の対象となる場合もあります。これらの新しい薬剤の登場により、リウマチ治療の目標である「臨床的寛解」の達成が、より多くの患者さんで可能になってきています。
生物学的製剤とJAK阻害薬リウマチ治療の進歩