熱はないけれど、痰が絡む咳が続いている時、痰の色や性状は、その原因を探る上で重要な手がかりとなることがあります。ただし、痰の色だけで病気を特定できるわけではないため、あくまで参考情報として捉え、必ず医師の診察を受けるようにしましょう。まず、透明または白色の痰は、比較的健康な状態でも見られることがあります。気道から分泌される粘液が主な成分で、気管支炎の初期や、咳喘息、アトピー咳嗽、あるいはアレルギー性鼻炎による後鼻漏などでも見られます。量が多かったり、粘り気が強かったりする場合は、何らかの炎症が起きている可能性があります。黄色や緑色の痰は、一般的に細菌感染を示唆していると考えられます。白血球の死骸や細菌などが混じることで、このような色になります。副鼻腔炎(蓄膿症)や、細菌性の気管支炎、肺炎などでは、黄色や緑色の膿性の痰が出ることが多くなります。ただし、ウイルス感染でも、炎症が長引くと黄色っぽい痰が出ることがあります。茶褐色や錆び色(さびいろ)の痰は、古い血液が混じっている可能性を示し、肺炎球菌による肺炎などで見られることがあります。ピンク色で泡状の痰は、心不全による肺水腫(肺に水が溜まる状態)の際に見られることがあり、緊急性の高いサインです。赤い色の痰、つまり血痰(けったん)は、気道からの出血を示しており、注意が必要です。気管支炎や気管支拡張症、肺結核、肺がんなど、様々な病気が原因となり得ます。少量であっても、血痰が出た場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。痰の粘り気も重要です。サラサラとした水っぽい痰は、ウイルス感染の初期やアレルギー性鼻炎などで見られます。ネバネバとした粘稠(ねんちょう)な痰は、気管支喘息や慢性気管支炎、気管支拡張症などで見られることがあります。このように、痰の色や性状は、病状を推測する上でのヒントになりますが、これだけで自己判断するのは危険です。熱のない痰がらみの咳が続く場合は、痰の状態も医師に伝え、適切な検査と診断を受けるようにしてください。