胎児性アルコール症候群(FAS:Fetal Alcohol Syndrome)は、母親が妊娠中にアルコールを摂取したことによって、胎児に様々な影響が現れる先天性の疾患群です。その影響は、身体的な発達の遅れ、中枢神経系の障害(知的障害や学習障害、行動上の問題など)、そして特徴的な顔貌(顔つき)として現れることがあります。大人になったFASの当事者の方々にも、これらの特徴が見られる場合があります。FASに典型的に見られる顔貌的特徴としては、まず「人中(じんちゅう:鼻の下から上唇にかけての溝)の平坦化または不明瞭」が挙げられます。通常、人中にははっきりとした溝がありますが、FASの方ではこの溝が浅かったり、ほとんど見られなかったりすることがあります。次に、「薄い上唇(じょうしん:うわくちびる)」も特徴の一つです。上唇の赤い部分が薄く、細長く見えることがあります。そして、「短い眼瞼裂(がんけんれつ:まぶたの上下の開き)」も指摘されています。目が小さく見えたり、目と目の間が広く見えたりすることがあります。これらの顔貌的特徴は、あくまで典型的なものであり、全てのFASの当事者に必ず現れるわけではありません。また、これらの特徴が一つでも当てはまるからといって、必ずしもFASであるとは限りません。診断は、顔貌的特徴だけでなく、妊娠中の母親のアルコール摂取の確認、成長障害、そして中枢神経系の障害といった複数の要素を総合的に評価し、専門医によって慎重に行われます。大人になってからFASと診断されるケースでは、子どもの頃からの発達の遅れや学習面・行動面での困難さ、そしてこれらの顔貌的特徴が手がかりとなることがあります。FASは予防可能な疾患であり、妊娠中のアルコール摂取を完全に避けることが最も重要です。もし、自身や身近な人にFASの疑いがある場合は、専門の医療機関や相談窓口に相談することが大切です。
胎児性アルコール症候群(FAS)とは?大人の顔貌的特徴