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2025年11月
  • 高尿酸血症がもたらす全身への影響

    医療

    私たちの体は複雑なシステムで成り立っており、そのバランスが崩れると様々な問題が生じます。血液中の尿酸濃度が高まる「高尿酸血症」もその一つで、放置すると全身に深刻な影響を及ぼす可能性があります。多くの人が尿酸値の異常を軽視しがちですが、その裏側では、私たちの体を静かに蝕む病気が進行しているかもしれないのです。尿酸は、細胞の代謝や食品中のプリン体が分解される際に生成される老廃物であり、通常は腎臓を通じて体外へ排出されます。しかし、尿酸の生成量が増えすぎたり、排出が滞ったりすると、血液中の尿酸濃度が上昇し、高尿酸血症となります。この状態が長期にわたって続くと、全身の健康に様々な悪影響を及ぼし始めます。高尿酸血症の最も代表的な症状は「痛風」です。痛風は、尿酸が結晶化して関節に沈着し、炎症を引き起こすことで激しい痛みを伴う発作です。特に足の親指の付け根に好発し、「風が吹くだけでも痛い」と表現されるほどの激痛は、患者の生活の質を著しく低下させます。一度発症すると再発を繰り返すことが多く、適切な治療を受けなければ関節が破壊され、変形を来すこともあります。しかし、痛風は高尿酸血症の氷山の一角に過ぎません。尿酸結晶は、関節だけでなく、腎臓や尿路にも沈着する可能性があります。腎臓に尿酸結晶が沈着すると、「痛風腎」と呼ばれる状態になり、腎機能が徐々に低下していきます。腎臓は体内の老廃物や余分な水分を排出する重要な役割を担っており、その機能が損なわれると、体内に毒素が蓄積し、全身に悪影響を及ぼします。痛風腎が進行すると、最終的には慢性腎臓病へと移行し、人工透析や腎移植が必要となるケースも少なくありません。これは、患者さんの生活を一変させ、医療費の負担も大きくなる深刻な問題です。また、尿路に尿酸結晶が沈着すると、「尿路結石」を形成します。尿路結石は、腎臓から尿管、膀胱、尿道へと移動する際に、激しい痛みや血尿、吐き気、頻尿などの症状を引き起こします。その痛みは非常に強く、耐え難いものです。結石の大きさや位置によっては、自然排出が困難で手術が必要となることもあります。