耳かきは、さっぱりとした爽快感を得られるため、習慣になっている人も少なくありません。しかし、耳かきをしすぎることは、実は耳の健康にとって逆効果になるリスクがあることをご存知でしょうか。耳の内部、特に外耳道には、自浄作用という素晴らしい機能が備わっています。これは、外耳道の皮膚が、鼓膜から耳の入り口に向かってゆっくりと移動することで、古い皮膚や分泌物、ホコリなどが混じり合った耳垢を自然に外へ排出する仕組みです。この耳垢は、単なる汚れたものとして見られがちですが、実は耳の内部を乾燥や細菌の侵入から守る、非常に重要な役割を担っています。しかし、頻繁に耳かき、特に綿棒や耳かき棒を耳の奥まで挿入する行為は、この大切な自浄作用を妨げてしまいます。まず、耳垢をさらに奥へと押し込んでしまうことで、「耳垢栓塞(じこうせんそく)」を引き起こす可能性が高まります。耳垢栓塞は、耳が詰まった感じや難聴、耳鳴り、さらにはめまいといった症状を引き起こし、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。次に、過度な耳かきは、外耳道のデリケートな皮膚を傷つけ、炎症や感染症を引き起こすリスクを高めます。耳の皮膚は非常に薄く敏感なため、少しの摩擦や刺激でも赤み、かゆみ、痛みが生じやすくなります。最悪の場合、外耳炎や中耳炎といった深刻な病気へと発展することもあります。さらに、習慣的な耳かきによって、耳かきをしていないと落ち着かない、といった心理的な依存状態に陥る人もいます。推奨される耳かきの頻度は、多くの場合、月に1回程度、耳の入り口付近を軽く拭き取る程度で十分です。入浴後など、耳垢が柔らかくなっている時に、清潔なタオルや柔らかい綿棒で優しくケアするのが良いでしょう。もし耳の奥に異常を感じたり、耳垢が固まって取れない場合は、自己判断せずに必ず耳鼻咽喉科を受診してください。専門医による適切な診断と処置が、耳の健康を守る上で最も確実な方法です。耳かきのしすぎは耳の健康を害する可能性があることを理解し、適切なケアを心がけましょう。