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飼い犬に噛まれた場合も病院へ行くべき?
「自分の飼い犬だから大丈夫だろう」「ちょっと甘噛みされただけだから」と、飼い犬に噛まれた傷を軽視してしまうことがあるかもしれません。しかし、たとえ飼い犬であっても、噛まれた場合は医療機関を受診することが推奨されます。その理由を理解しておきましょう。まず、犬の口の中には、人間にとっては病原性のある様々な常在菌が存在しています。これらの細菌は、犬自身には害を及ぼさなくても、人間の体に入ると感染症を引き起こす可能性があります。噛まれた傷からこれらの細菌が侵入し、化膿したり、リンパ管炎や蜂窩織炎といったより広範囲な感染症に進行したりするリスクは、飼い犬であっても野良犬であっても基本的に変わりません。特に、免疫力が低下している方(高齢者、乳幼児、持病のある方など)は、感染症が重症化しやすいため注意が必要です。次に、破傷風のリスクです。破傷風菌は土壌中などに広く存在する細菌であり、犬が散歩などで屋外に出る以上、その口の中に破傷風菌が付着している可能性は否定できません。飼い犬だからといって、破傷風のリスクがゼロになるわけではないのです。日本の犬は狂犬病予防接種が義務付けられていますが、破傷風に関しては、犬自身がワクチンを接種しているわけではありません。そのため、飼い犬に噛まれた場合でも、人間の破傷風トキソイドワクチンの接種歴によっては、追加接種が検討されます。また、傷の深さや大きさによっては、縫合処置が必要になることもあります。自己判断で放置すると、傷がきれいに治らなかったり、感染を起こしやすくなったりする可能性があります。さらに、飼い犬に噛まれたという事実は、犬のしつけや飼育環境に何らかの問題がある可能性を示唆しているかもしれません。医療機関を受診することで、傷の治療だけでなく、今後同様の事故を防ぐためのアドバイスを受けられることもあります。もちろん、飼い犬が定期的に狂犬病予防接種を受けており、健康状態も良好で、噛まれた傷がごく浅い擦り傷程度であれば、念入りに洗浄・消毒して様子を見るという判断もあるかもしれません。しかし、少しでも不安がある場合や、傷が深い、出血が多いといった場合は、迷わず医療機関を受診するようにしましょう。