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FASの顔貌的特徴大人でも診断の決め手に?
胎児性アルコール症候群(FAS)の診断において、特徴的な顔貌は重要な手がかりの一つとなりますが、特に大人になってからの診断の場合、顔貌的特徴だけでFASと断定することはできません。FASの診断は、複数の基準を総合的に評価して行われる複雑なプロセスです。FASの診断基準には、一般的に以下の三つの主要な項目が含まれます。①妊娠中の母親によるアルコール摂取の確認、②特徴的な顔貌(人中の平坦化、薄い上唇、短い眼瞼裂など)、③成長障害(低身長や低体重など)、そして④中枢神経系の障害(知的障害、学習障害、注意欠如・多動症(ADHD)様の症状、行動上の問題、記憶力の低下、実行機能の困難さなど)です。これらのうち、複数の項目を満たす場合にFASと診断されます。大人の場合、子どもの頃に比べて顔貌的特徴がやや目立たなくなっている可能性もありますし、成長障害についても、成人身長に達しているため評価が難しい場合があります。そのため、大人になってからのFASの診断では、妊娠中のアルコール曝露の確認と、中枢神経系の障害の評価がより重視される傾向にあります。特に、子どもの頃からの発達歴や学習歴、行動面での困難さ、社会適応の状況などを詳しく聞き取ることが重要になります。顔貌的特徴は、あくまで診断の一助となる情報であり、それが診断の唯一の決め手となるわけではありません。また、FASの顔貌的特徴は、他の遺伝性疾患や症候群と類似している場合もあるため、鑑別診断も慎重に行う必要があります。もし、大人になってから自分自身や身近な人がFASではないかと疑われる場合、まずは発達障害や先天性疾患に詳しい専門医(例えば、精神科医、神経内科医、遺伝専門医など)に相談することが大切です。専門医は、必要な情報を収集し、適切な評価を行い、診断や今後の対応についてアドバイスをしてくれます。顔貌的特徴の有無に一喜一憂せず、総合的な視点からの診断を求めるようにしましょう。