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大人のFAS顔の特徴以外の重要なサイン
胎児性アルコール症候群(FAS)や胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)は、特徴的な顔貌だけでなく、様々な中枢神経系の障害や行動上の問題を伴うことがあります。特に大人になってからの困難さは、顔貌的特徴よりもこれらのサインの方がより顕著に現れることがあります。FAS/FASDの当事者が大人になって直面しやすい困難としては、まず、注意欠如・多動症(ADHD)様の症状が挙げられます。集中力が続かない、忘れ物が多い、計画を立てて物事を進めるのが苦手、じっとしていられない、衝動的な行動をとってしまうといった症状は、仕事や日常生活に大きな影響を与えることがあります。また、学習面での困難さも継続することがあります。読み書きや計算が苦手であったり、情報を記憶したり処理したりする能力に課題があったりすることが、学業や職業選択に影響を及ぼす可能性があります。実行機能の障害も、FAS/FASDの重要な特徴の一つです。これは、目標を設定し、計画を立て、それを実行し、状況に応じて修正していくといった一連の能力のことで、この機能に困難があると、自己管理や問題解決が難しくなります。対人関係やコミュニケーションのスキルにも課題を抱えることがあります。相手の気持ちを理解したり、場の空気を読んだりすることが苦手だったり、衝動的な言動でトラブルになったりすることがあります。感情のコントロールが難しく、些細なことで怒ったり、落ち込んだりしやすいといった傾向が見られることもあります。さらに、精神疾患(うつ病、不安障害、依存症など)を併発するリスクも高いと言われています。これらの困難さは、本人の努力不足や性格の問題ではなく、胎児期のアルコール曝露による脳機能の障害が背景にある可能性があります。もし、大人になってからこれらのサインに心当たりがあり、それが子どもの頃から続いていると感じる場合は、専門の医療機関や相談窓口に相談してみることが大切です。適切な理解と支援を受けることで、困難さを軽減し、より生きやすくなる道が開けるかもしれません。