病院ナビ

うっ滞性皮膚炎の最も一般的な原因の一つとして、「下肢静脈瘤（かしじょうみゃくりゅう）」が挙げられます。この二つの病気は密接に関連しており、下肢静脈瘤を治療することが、うっ滞性皮膚炎の根本的な改善に繋がるケースも少なくありません。下肢静脈瘤とは、足の静脈にある血液の逆流を防ぐための弁（静脈弁）が壊れたり、働きが悪くなったりすることで、血液が足の方へ逆流し、静脈内に血液が溜まってしまう（うっ滞する）病気です。その結果、静脈がコブのように膨らんだり、拡張したりします。この静脈のうっ滞が長期間続くと、足の皮膚や皮下組織に様々な変化が起こり、うっ滞性皮膚炎が発症するのです。具体的には、うっ滞によって静脈内の圧力が上昇し、毛細血管から水分や血液成分（赤血球など）が周囲の組織に漏れ出しやすくなります。漏れ出した水分はむくみ（浮腫）となり、赤血球に含まれるヘモグロビンが分解されてできるヘモジデリンという色素が皮膚に沈着することで、皮膚が茶色っぽく変色します。また、慢性的なうっ滞は、皮膚に炎症を引き起こし、かゆみや湿疹、乾燥といった症状が現れます。進行すると、皮膚が硬くなったり、栄養状態が悪化して治りにくい潰瘍を形成したりすることもあります。下肢静脈瘤の症状としては、足の血管が浮き出て見える（ボコボコとしたコブ状、クモの巣状、網目状など）、足のだるさや重さ、むくみ、こむら返り、ほてり感、かゆみなどが挙げられます。これらの症状とともに、うっ滞性皮膚炎の兆候（皮膚の変色、湿疹など）が見られる場合は、下肢静脈瘤が原因である可能性が高いと考えられます。下肢静脈瘤が疑われる場合は、循環器内科や血管外科、あるいは下肢静脈瘤を専門とするクリニックを受診しましょう。超音波検査などで静脈の状態を詳しく調べ、適切な治療法（弾性ストッキング、硬化療法、レーザー治療、高周波治療、手術など）を選択します。下肢静脈瘤の治療によって静脈のうっ滞が改善されれば、うっ滞性皮膚炎の症状も軽減・解消されることが期待できます。