犬に噛まれてしまった後、傷が治っても気になるのが「傷跡」です。特に顔や手足など、目立つ部分に傷ができてしまった場合、できるだけきれいに治したいと願うのは当然のことでしょう。傷跡を最小限に抑えるためには、初期の適切な処置と、その後の丁寧なケアが重要になります。まず、犬に噛まれたら、速やかに医療機関を受診し、傷の洗浄・消毒、必要であれば縫合処置といった適切な初期治療を受けることが大前提です。感染を起こすと、炎症が長引き、傷跡が残りやすくなるため、感染予防のための抗菌薬の処方も重要です。傷が治癒していく過程では、医師の指示に従い、傷口を清潔に保ち、乾燥させないように保護することが大切です。最近では、湿潤療法(モイストヒーリング)といって、傷口を適度な湿潤環境に保つことで、皮膚の再生を促し、傷跡をきれいに治す方法も注目されています。自己判断で消毒液を頻繁に使用したり、かさぶたを無理に剥がしたりするのは避けましょう。また、傷跡の治癒には時間がかかります。治癒過程で、傷跡が赤く盛り上がったり、硬くなったり(肥厚性瘢痕やケロイド)、あるいは逆に凹んだり、色素沈着(シミのようなもの)や色素脱失(白っぽくなる)が起こったりすることがあります。これらの傷跡を目立たなくするためには、いくつかのケア方法があります。まず、紫外線対策です。傷跡は紫外線によって色素沈着を起こしやすいため、治癒後もしばらくは、日焼け止めを塗ったり、テープで保護したりして、紫外線を避けるようにしましょう。保湿も重要です。乾燥は傷跡の治りを悪くする可能性があるため、低刺激性の保湿剤でこまめに保湿を心がけます。また、シリコンジェルシートやテープなど、傷跡専用のケア製品を使用するのも有効な場合があります。これらの製品は、傷跡にかかる張力を軽減したり、保湿効果を高めたりすることで、傷跡の盛り上がりや赤みを抑える効果が期待できます。もし、傷跡が気になる場合は、皮膚科や形成外科に相談してみましょう。形成外科医は、傷跡修正の専門家であり、レーザー治療やステロイド注射、外科的な修正手術など、様々な治療法を提案してくれます。焦らず、根気強くケアを続けることが、きれいな治癒への道となります。