「浮腫(ふしゅ)」とは、一般的に「むくみ」として知られる症状で、体内の水分バランスが崩れ、細胞と細胞の間(間質)に余分な水分が溜まってしまう状態を指します。夕方になると足がパンパンになる、指輪がきつくなる、まぶたが腫れぼったいといった経験は、多くの方が一度はしたことがあるのではないでしょうか。多くの場合、長時間の立ち仕事や座り仕事、塩分の摂りすぎ、睡眠不足、運動不足といった一時的な原因で起こり、一晩寝ると改善するため、軽視されがちです。しかし、この浮腫が悪化したり、慢性化したりすると、様々な健康上の問題を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。浮腫が悪化すると、まず見た目の変化だけでなく、重だるさや倦怠感、痛みといった不快な症状が現れやすくなります。また、皮膚が常に引き伸ばされた状態になるため、皮膚のバリア機能が低下し、乾燥しやすくなったり、かゆみが出たり、湿疹や皮膚炎を起こしやすくなったりします。さらに、血行が悪くなることで、皮膚の色素沈着や、傷が治りにくくなるといったトラブルも招きます。そして、浮腫は単なる体質の問題ではなく、心不全、腎不全、肝硬変、甲状腺機能低下症といった重大な内臓疾患や、下肢静脈瘤、深部静脈血栓症、リンパ浮腫といった血管やリンパ系の病気のサインであることもあります。これらの病気が背景にある場合、浮腫を放置すると元の病気が進行し、より深刻な事態に至る可能性があります。例えば、心不全による浮腫を放置すれば、呼吸困難が悪化したり、不整脈のリスクが高まったりします。深部静脈血栓症では、血栓が肺に飛んで肺塞栓症を引き起こすと命に関わることもあります。浮腫が悪化する前に、その原因を特定し、適切な対処をすることが、健康を守るために非常に重要です。