熱はないのに、喉の奥に痰が絡んでいるような不快感が続き、咳払いをしたくなったり、実際に咳が出たりする…。このような症状の原因として、意外と多いのが「後鼻漏(こうびろう)」です。後鼻漏とは、鼻水が鼻の奥からのどの方へ流れ落ちてくる状態を指します。通常、鼻水は鼻の前方から排出されますが、何らかの原因で鼻水の量が増えたり、粘り気が強くなったりすると、のどの方へ流れ込みやすくなります。この流れ込んだ鼻水が、のどの粘膜を刺激したり、気管に入りそうになったりすることで、痰が絡んでいるような感覚や、咳反射が起こるのです。後鼻漏による咳は、特に朝起きた時や、横になった時に悪化しやすい傾向があります。また、常に喉に何か引っかかっているような違和感や、咳払いを頻繁にしてしまうといった症状も特徴的です。痰の色は、原因となる鼻の病気によって異なり、透明な場合もあれば、黄色や緑色の膿性のこともあります。後鼻漏を引き起こす主な原因疾患としては、まず「副鼻腔炎(蓄膿症)」が挙げられます。副鼻腔に炎症が起こり、膿性の鼻水が溜まると、それがのどへ流れ込みやすくなります。「アレルギー性鼻炎」や「血管運動性鼻炎」などでも、鼻水の量が増えるため、後鼻漏が起こりやすくなります。また、風邪をひいた後、鼻の炎症が長引いて後鼻漏が続くこともあります。その他、稀ではありますが、鼻の奥にできたポリープ(鼻茸)や腫瘍などが原因となることもあります。もし、熱のない痰がらみの咳が続き、鼻水や鼻づまり、喉の違和感といった症状もある場合は、後鼻漏の可能性を考えて、耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。耳鼻咽喉科では、鼻や喉の状態を内視鏡などで詳しく観察し、原因となっている疾患を特定し、それに応じた治療(薬物療法、鼻洗浄、ネブライザー療法など)を行います。原因疾患を治療することで、後鼻漏が改善し、しつこい咳や痰の症状も軽減されることが期待できます。