浮腫(むくみ)が悪化し、慢性化すると、皮膚のバリア機能や局所の免疫力が低下するため、細菌感染症を起こしやすくなります。その代表的なものが「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」です。蜂窩織炎は、皮膚の深い部分(真皮から皮下組織)に細菌が侵入し、炎症を引き起こす病気で、適切な治療を行わないと重症化することもあるため注意が必要です。浮腫があるとなぜ蜂窩織炎になりやすいのでしょうか。まず、むくんでいる組織では、血液やリンパ液の流れが悪くなっています。これにより、酸素や栄養素が十分に行き渡らず、また、細菌と戦う白血球などの免疫細胞も患部に集まりにくくなります。その結果、細菌に対する抵抗力が低下し、感染が起こりやすくなるのです。また、むくみによって皮膚が引き伸ばされ、薄くなったり、乾燥しやすくなったりすると、皮膚のバリア機能が低下し、小さな傷やひび割れ、虫刺されなどから細菌が容易に侵入できるようになります。特に、リンパ浮腫や慢性的な静脈うっ滞(下肢静脈瘤など)がある場合は、蜂窩織炎を繰り返し発症しやすい傾向があります。蜂窩織炎の主な症状は、患部の急な赤み、腫れ、熱感、そしてズキズキとした強い痛みです。境界が比較的はっきりしない、広範囲な炎症が特徴です。進行すると、水ぶくれ(水疱)ができたり、皮膚の下に膿が溜まったりすることもあります。また、発熱や悪寒、倦怠感、頭痛といった全身症状を伴うことも少なくありません。蜂窩織炎が疑われる場合は、速やかに医療機関(皮膚科や内科など)を受診する必要があります。治療の基本は、原因となっている細菌に対する抗菌薬(抗生物質)の投与です。軽症であれば内服薬で治療可能ですが、症状が強い場合や、全身症状がある場合は、入院して点滴による抗菌薬治療が必要となることもあります。また、患部を安静にし、冷やしたり、足を高く上げたりすることも症状の緩和に役立ちます。浮腫がある方は、日頃から皮膚を清潔に保ち、保湿を心がけ、小さな傷でも放置せずに適切に処置することが、蜂窩織炎の予防には重要です。