足のむくみや顔の腫れといった浮腫の症状は、一時的なものであれば心配いりませんが、慢性的に続く場合や、急激に悪化する場合は、その背景に重大な病気が隠れている可能性があります。浮腫を放置することで、これらの病気が進行し、命に関わる事態に至ることもあるため、注意が必要です。まず、心臓の病気である心不全です。心臓のポンプ機能が低下すると、全身に血液をうまく送り出せず、体内に水分が溜まりやすくなり、浮腫が生じます。心不全による浮腫を放置すると、呼吸困難が悪化したり、不整脈が起こりやすくなったり、最悪の場合は心停止に至るリスクもあります。次に、腎臓の病気である腎不全です。腎臓は体内の水分や塩分を調節し、老廃物を排出する役割を担っていますが、腎機能が低下すると、これらの機能がうまく働かなくなり、浮腫が生じます。腎不全が進行すると、尿毒症という状態になり、透析治療や腎移植が必要になることもあります。また、肝臓の病気である肝硬変も、浮腫の原因となります。肝硬変になると、血液中のアルブミンというタンパク質を作る能力が低下し、血管内の水分を保持する力が弱まるため、水分が血管の外に漏れ出て浮腫が生じます。肝硬変が進行すると、腹水や食道静脈瘤破裂、肝性脳症といった命に関わる合併症を引き起こす可能性があります。さらに、足の血管の病気である深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)も、浮腫の重要な原因です。足の静脈にできた血栓が血流に乗って肺に到達し、肺の血管を詰まらせてしまう肺塞栓症は、突然の呼吸困難や胸痛を引き起こし、死に至ることもある非常に危険な状態です。その他、甲状腺機能低下症や悪性腫瘍(がん)、重度の栄養失調なども、浮腫の原因となることがあります。これらのように、浮腫が悪化する背景には、様々な重篤な病気が潜んでいる可能性があります。原因不明の浮腫が続く場合や、息切れ、体重増加、尿量の変化といった他の症状を伴う場合は、自己判断せずに速やかに医療機関を受診し、原因を特定してもらうことが重要です。