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胎児性アルコール症候群（FAS）や胎児性アルコール・スペクトラム障害（FASD）は、特徴的な顔貌だけでなく、生涯にわたる学習面や行動面、社会適応の困難さを伴うことがあります。大人になった当事者の方々が抱える困難さに対して、周囲の理解と適切な支援が不可欠です。FAS/FASDの診断は、特に大人になってからでは難しい場合があります。子どもの頃の顔貌的特徴が変化していたり、成長障害が目立たなくなっていたりすることもあります。また、妊娠中の母親のアルコール摂取に関する正確な情報を得るのが困難な場合もあります。しかし、診断の有無に関わらず、当事者が日常生活や社会生活で直面している困難さ（例えば、注意力の問題、計画性のなさ、衝動性、対人関係の難しさ、感情コントロールの課題など）に焦点を当て、個別のニーズに応じた支援を提供することが重要です。顔貌的特徴は、あくまでFAS/FASDの可能性を示唆する一つのサインであり、それ自体がその人の能力や価値を決めるものではありません。周囲の人は、見た目の特徴だけで判断したり、偏見を持ったりすることなく、その人の内面や抱える困難さに目を向ける必要があります。FAS/FASDの当事者への支援としては、まず、その特性を理解し、受け入れることから始まります。そして、具体的な困難さに対して、環境調整（例えば、指示を分かりやすくする、視覚的な手がかりを活用する、静かで集中しやすい環境を作るなど）や、スキルトレーニング（ソーシャルスキル、時間管理、金銭管理など）、心理的なサポート（カウンセリングなど）が有効な場合があります。また、就労支援や生活支援といった福祉サービスも、当事者の自立した生活を支える上で重要な役割を果たします。大切なのは、当事者が一人で悩みを抱え込まず、信頼できる専門家や支援機関に相談できる環境を整えることです。社会全体でFAS/FASDへの理解を深め、当事者とその家族が安心して暮らせるような温かい支援の輪を広げていくことが求められています。