うっ滞性皮膚炎は、初期には足のむくみや皮膚の軽い変色、かゆみといった症状から始まりますが、適切な治療やケアを行わずに放置しておくと、徐々に進行し、より深刻な状態や合併症を引き起こす可能性があります。その中でも特に注意が必要なのが、「皮膚潰瘍(ひふかいよう)」の形成です。うっ滞性皮膚炎が進行すると、慢性的な静脈のうっ滞によって、足の皮膚の血行が著しく悪くなり、皮膚細胞に必要な酸素や栄養素が十分に行き渡らなくなります。また、老廃物も溜まりやすくなります。このような状態が続くと、皮膚の抵抗力が低下し、非常に弱く、傷つきやすい状態になります。そして、わずかな傷や摩擦、あるいは自然に皮膚が破れて、治りにくい潰瘍(皮膚や皮下組織が欠損し、えぐれた状態)ができてしまうのです。この潰瘍は、特に足首の内くるぶし周辺にできやすいと言われています。潰瘍ができると、強い痛みを伴ったり、浸出液(じゅくじゅくとした液体)が出たり、細菌感染を起こして悪臭を放ったりすることがあります。治療には長期間を要し、専門的な創傷ケア(洗浄、消毒、軟膏処置、特殊な被覆材の使用など)が必要となります。場合によっては、皮膚移植などの手術が必要になることもあります。潰瘍以外の合併症としては、まず「自家感作性皮膚炎(じかかんさせいひふえん)」があります。これは、うっ滞性皮膚炎の炎症が原因となり、体の他の部位(例えば、腕や体幹部など)にも、かゆみを伴う湿疹が広がってしまう状態です。また、慢性的な炎症や掻き壊しによって、皮膚が硬く厚くなる「苔癬化(たいせんか)」や、象の皮膚のようにゴワゴワになる「象皮病様変化」が見られることもあります。さらに、皮膚のバリア機能が低下しているため、細菌感染(蜂窩織炎など)を繰り返しやすくなるという問題もあります。これらの進行や合併症を防ぐためには、うっ滞性皮膚炎の初期の段階から、原因となっている静脈のうっ滞を改善するための治療(圧迫療法や下肢静脈瘤の治療など)と、皮膚症状に対する適切なケアを継続して行うことが非常に重要です。