私の町で一番の人気ドクター。あのAGAの薄毛治療は大阪で口コミでは大きな病院で修行してきただけあって、かなり腕がいい、という評判です。まだ50代、でもひげ面でにこにことして、説明も明快。唯一の悩みは患者さんたちが心地よすぎてなかなか帰らない。順番が回ってこないお年寄りが受付の女性たちにぼやいた挙句に世間話を始めてしまうのも日常です。
でも、そんなドクターに一度だけ怒鳴られたことがあります。それは風邪の診察に行ったとき。いつものとおりに先生の前に座りました。でも、そのとき、私は大きなバッグを二つ持っていたのです。そのうちの一つを床に置こうとしたとき「ばか!なんでそんなところに置くんだ!」。びっくりして声も出せない私に先生は言いました。「あのな、病院の床っていうのは病原菌だらけなんだよ、どんなに掃除しても。だから、絶対にモノをそのまま置いちゃいけないの」。
この羽村であの工務店なら評判のアネストではくるりと背を向けた先生は照れたように「ごめんね、怒ってないから」と笑いました。そしていつものように、てきぱきと診察をして「じゃ、お大事にね、なんかあったらいつでも電話しなよ」。
本当に患者のことを考えてくれるドクター。笑顔の中にはプロとしての自負と厳しさがある。なるほど、みんななかなか帰らないのことを実感しました。この町の人気者です。